2023-11-04

「胴抜き」とは

11月にも関わらず連日の夏日。こないだ生徒が言いました「もう25度が夏日って、辞めた方がいいですよね〜。だって25度なんて全然夏じゃないし」ホントそれ…  25度なんて夏じゃないです。夏とは30度を過ぎてからです。言い方変えて欲しい。30度で夏日、35度で真夏日。37度辺りで猛暑日…ですよね。

カレンダー的には秋なのに気温は夏日。そんな今にピッタリな、胴抜き仕立ての大島紬。

胴抜き仕立ての大島

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは元々「胴抜き仕立て」にはどっちかと言うと「あんまり…」な方でした。わたし自身が持っている胴抜き仕立ての着物は、久留米絣のお着物です。久留米に研修会で行った際に一目見て気に入った反物で、織元さんにも名古屋の呉服店さんにも「久留米絣は胴抜き仕立てにした方が良いよ!」と言われて、言う通りにしたのですが…後悔しています(涙)。木綿の表地に正絹の裏(八掛)を付けると、着る度に裏が縮むのです。つまり、表に袋が入る。1回着る度に裏を伸ばしてアイロン仕上げをしなくてはならず、超面倒な着物になってしまいました。しかも爽やかな寒色系の反物だったのに、胴抜きにしてしまったが故に袷の時期しか着られなくなってしまい…単衣で作っておけば「普段着」と称して年中着られたのに…八掛の色も大好きで、今更解く気持ちにもなれず。とにかく後悔しかないです。でも大好きでお気に入りの着物です。着る度に裏を伸ばす手間だけがツラいのですが、これ、わたしだけ??

そもそも「胴抜き」とは何ぞや…

お着物には「単衣」と「袷」の2種類が存在します。「単衣」は表地1枚だけでお仕立てするので、裏返すと生地の裏面が露出します。「袷」は表地と裏地があり、表と裏をそれぞれ縫って裾の所で表裏を合体させた後に、「中とじ」という作業で双方をくっ付けます。裏地にする生地は「八掛」と「胴裏」という2つの生地を使用するのが普通です。「胴抜き」仕立ては、この「胴裏」をグッと減らして、上半身and袖部分の裏地をカット(抜く)仕立て方です。

胴抜き仕立ての大島

 

 

 

 

 

 

 

 

正直、仕立ては袷仕立てよりも面倒です。すごく面倒です。「袷>胴抜き」というイメージの方が多いと思いますが、仕立ての手間だけ見たら圧倒的に胴抜きの方が手数が多いです! だからイヤ、でした。

でも…

こんなに気温が高い時期が長く続くとなると、胴抜きは確かに便利なアイテムですね。今回お仕立てした大島紬であれば、おそらくわたしの久留米絣のような表裏の不具合は生じにくいと思います。表地正絹×裏地正絹の場合、大概は縮むのは表の方なので、お召しになる分にはそれ程不具合を感じません。「仕上げ直し」を承ると、お仕立て後ある程度時間の経過したお着物は、着用してしていなくてもだいたい表が縮んでいて裏に相当な袋が入っています。これは正常な生地の変化なので、「そういうものなんだ」と受け入れて頂くしかないです。アイロン仕上げで直るものではありません。

以前にあるお客様が、呉服店さんに「どっちもいけるから」と言われて胴抜き仕立てで作られた付け下げを持ち込まれた事がありました。「どっちもいけるから」?って何が??どゆこと?? そのお客様は「袷の時期も単衣の時期もどっちもいける」と解釈されていました…「どっちもいける」と言われたら、そう思われるのも無理はないですが、いやいや…「胴抜き」はあくまで「袷」の中にカテゴライズされる仕立て方です。お召しになって帯を締めてしまえば、360度どっから見ても普通に「袷」の着物です。どっちもいけたりしません。ただ普通に「袷」です。だからこそ、今みたいな袷の時期なのに現実的にはけっこう気温が高い時に便利だと思います!

正直、仕立てが面倒だから敬遠していましたが…もう現実がこんなんなっちゃったら、そりゃ「胴抜き」にしたいですよね。分かります。あんまりやりたく無い、とかもう言いません。胴抜き、アリですよ。良いですよ。

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