2022-09-16

大切なお着物が羽織になるまで 2

さて、前回からの続きです。

「着物→着物」というお仕立て直しではなく、「着物→羽織」という、完全なお仕立て変えに方針転換したものの、汚れの問題はやはり切実でした。主にこの子達です。(黄色い糸印)

落とせない汚れのあるお着物

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで…汚れた所を切り落としてしまうことにしました!普通は身頃は右と左で2枚、後身頃と前身頃は繋がっています。それを前後左右4枚バラバラにして、肩山で前と後を縫い合わせました。つまり、元着物の身頃をバッサリ切らねばならないのです。こんな風に。

IMG_4046

これ、ただ単純に羽織丈だけを考慮して切っているのではありません。完成時に汚れが目立たない様に、元々裾だった方を今度の羽織の肩山に持ってくるという、天地を変えるアクロバティックな配置変換をし、且つ、縫い合わせる肩山で柄を前後ピッタリ同じになるようにしています… 伝わらないかもしれませんが、コレ、し損じたら一発アウトなんです。

キッチリ計算したから羽織丈は大丈夫!柄もアッチとコッチで同じだから大丈夫!そう思っているわたし自身は大丈夫…????なんて自分への問い掛けをしつつ、切らないことには始まらないので切りますが…  ここでやっちゃったらケツバットじゃ済まない本当のOUTです。

わたしの毎日は、決断しなければならない瞬間の連続です。そして、それが「和裁」です。「裁」の字が意味するのは「切り離す」こと、そして「さばく」こと。「さばく」とは「善悪を判断する」だけでなく「丁度良くする」という意味もあります。正に今回「丁度良い」所で「切り離す」ことが、お仕立ての上で最大のテーマであり難所でした。そして、かなりうまいこといったと…思います( ◠‿◠ )!

お着物を羽織にお仕立て変え

 

 

 

 

 

 

 

 

よっぽど目を凝らさなければ、肩山に縫い目があるとは分からないと思います。出来上がった羽織の後姿がらこちら。

お着物を羽織にお仕立て変え

 

 

 

 

 

 

 

 

元々着物だった時は少々ゴワゴワしていた生地が、洗い張りをしたことでシットリとした質感に変化しました。絹はタンパク質、わたし達のお肌と一緒です。美しくある為に大事なのはとにかく保湿!性が抜けた生地は大概カラッカラに乾いていてパッサパサです。洗い張りは生地に水分補給をする保湿タイムにもなります。大切なお着物やよくお召しになるお着物は、ずっとそのままにせず、たまに解いて洗って仕立て直すと、より長くお使い頂けますよ。

 

そして…余った布で枕を作ってみました。

長羽織の共布で枕を作る

 

 

 

 

 

 

 

 

長羽織は文庫に入れる際に中途半端な所で折れるので、そこにこの枕。

長羽織の共布で枕を作る

 

 

 

 

 

 

 

 

共布の枕はあまり無いと思うので、お客様が「キャ〜〜♡♡♡」て、なってくれないかなー…なんて、期待しています。だって、枕にお花の柄が出るように考えて作ったのですもの♡

ものづくりは苦しくて辛くて楽しくて幸せで…トータルどうなのか?まだ分かりませんが、まだやめられません。

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