お宮詣りの初着を七五三の羽織に 夏が暑過ぎる件
8月も今週で終わり… blogを更新せずInstagramも触らずに、3週間ほど暑さでボーーっとしていました。7月の末頃から始まった体温超えの日々が最近ようやく終わりを迎え、普通の夏になってきました。普通って言っても35度弱なんですけどね。夏が暑過ぎて、生きて仕事するだけで限界です。あとはもう食べて寝るだけ。そんな酷暑がやっと和らいできたせいか、人間らしい生活を少しずつ取り戻しています。名古屋の夏、ホントきついです(涙)
さて、本当は7月に出来上がっていた、男の子の七五三用の羽織。
元々はお宮詣りの初着でした。
上着と下着とあり、下着はきれいなレモンイエロー。
解いて洗って、羽織へとお仕立て変え。一ツ身なので、すごーーくちっちゃいです。
この「初着→男児用羽織」は、柄の入り方や元々の仕立て方によって、1点1点出来上がりの形状が異なります。去年もこのお仕立て変えをさせて頂いたのですが、その時は身頃の裾に揚げをして、衿の継ぎ目を隠しました(羽織に直す際に衿にする布が不足するので、初着の紐や衽を継ぎ合わせます)。後ろ姿がこちら↓(実は鷹の下に打ち出の小槌の刺繍が入っているのですが、揚げの中に入り完全に隠れています)
前姿がこちら↓ 衿の継ぎ目は揚げの中に入って見えなくなっています。
今回はその方法は採用せず、衿の継ぎ目はそのまま露出させる事にしました。下の写真の指差ししている所が継ぎ目です。同じ高さで左右の衿に継ぎ目が入っています。
動画も撮ってみました。継ぎ目はパッと見では分からない…はず。悪意を持って見ないで下さいね。
今回のお仕立てでは、裾で揚げをしてしまうと柄がどうにも良い感じにならない…衿の継ぎ目が見えちゃっても多分そんなに気にならない…この2点がお仕立ての方針の決め手になりました。でも、毎回悩みどころが同じかというと、そうでもなくて… とても難しい仕立て変えです。でも、出来上がると「あ〜、やって良かったな〜」て毎回思います。
この羽織のご依頼主は千葉県の方で、わざわざ名古屋の後藤和裁まで初着を送って下さいました。お父様がお生まれになった際の初着との事で、羽二重の手書き友禅でお仕立てもしっかりしていて「きっと待望の男子だったんだろうな〜」と感じました。感じた事をそのままお伝えすると「確かに父には男兄弟はいないです」とのお返事。その初着が70年以上の歳月を経て、5歳の男の子の祝着に生まれ変わりました。「無事に生まれてくれて本当に嬉しい」とか「ここまで大きくなってくれて本当によかった」という、子を思う親の気持ちは、いつの時代も同じなのですね。ありがたい事です。わたしにも生まれたばかりの時があって、七五三の時があって、その度に両親は通過儀礼の衣装を用意してくれました。現在父は85歳で母は82歳。わたしには子供はいないけれど、毎日両親と一緒にお仕事できて幸せです。家族について考える機会をくれる、このお仕立て変え。大変だけど…やっぱりやって良かった( ◠‿◠ )!!