アンサンブルの活用法
和服のアンサンブルは、一つの反物で着物と羽織、もしくは着物とコートを作ります。当然、着物用の反物や羽織やコート用の反物よりかなり長い反物になります。アンサンブル用の反物…最近見ませんね〜。かつては年末になると、ウールのアンサンブルや大島のアンサンブルをお正月の晴れ着としてよくお仕立てしたものですが、とんっっっと減りました。まず「お正月の晴れ着」の概念が、もう無いかもしれませんね(◞‸◟)
さて、そんなアンサンブル。お客さまから、お手持ちのアンサンブルを使って1枚のお着物に仕立て直したいとのご依頼を受けました。
初見の印象は「道行コート短かっっ!!!」でした。この縦横の比率…現代のコートではあり得ません。
そして次に印象深いのは、お着物に刺された家紋柄の刺繍。
背紋が無くとも「色紋付」と呼んで差し支えないのでは?いや、「付け下げ」なのか?とても素敵なお着物なのですが、お客さまには身丈が足りないのです。そこで、超ミニ丈の道行コートを足し布として使えないか?というご依頼でした。「なるほどねー!!!」と、感心しました。超ミニ丈の道行コートはコートとして再生するのは不可能。ならば素材として着物に投入してしまえ!という発想ですね。素晴らしいです。どうにもならないアンサンブルの活用法として、「THE BEST」だと思います!お着物もコートも解き洗い張りをして綺麗にして、元コートの生地を足し布にし、身丈を長くして色無地をお仕立て直しいたしました。指差している所は、お召しになるとお端折りの中に隠れます。指差しの分だけ後身頃と前身頃で、足し布の位置をズラしています。
出来上がったお着物は文庫にお入れしてお渡ししています。こんな仕上がりになりました!
受け取られたお客さまは「こうすると、何だか新品みたいですね〜」とおっしゃって下さいました。洗い張りをして仕立て直すと、本当に生まれ変わります。
新しいものを買うのもとっても楽しい事ですが、今あるものを生かして蘇らせる。それも、とても意味のある事です。物が増えるわけではありませんが、日々の営みやそれにまつわる思い出、今現在から未来にかけての思いなど、カタチにならない多くのものが一枚のお着物に集約され、そして重なり、繋がります。そうして生まれ変わったお着物を見て、改めて「お着物っていいな、和裁っていいな」としみじみ感じます( ◠‿◠ )