春色の着物 八掛を変えて気分も変えて
「母の遺した着物の中でどうしても気になるものがあり、着られるようにしたい…でも、八掛がこのままではちょっと… なんとかなりますか?」というお問い合わせを、去年、鳥取の方からメールで頂きました。
「解き洗い張りをして裏を取り替えましょう。寸法もMy寸法にできますよ。全部で費用はこれくらいですよ」という返信をお送りして…なんと、鳥取→名古屋のお仕事が成立いたしました!どうして後藤和裁を選んで下さったんでしょう…? どうしてわたし、そういう大事なことを質問しなかったんでしょう…?反省です。
当初から気掛かりだったのは、取り替える八掛の色をどうやって確認して頂くのか?という問題でした。そこで、洗い張り後の表地に八掛の色見本帳をのせて写真を撮り、メールで確認して頂きました。
それでもやはり写真では実際の色味とは多少異なりますので、色見本帳そのものを送る…という選択肢もご用意しました。結果としてはメールでのやり取りで完結して、「この色!」と即決でした。八掛の色を合わせる時は、色見本帳を見ても、実際に八掛の生地そのものを見ても、スグ決まる時はスグ決まるし、決まらない時は決まらないものです。なので、距離のあるお客さまとメールのやり取りだけで八掛が決まったのは、かなりかなり有難かったです。このような組み合わせになりました。
元々付いていた八掛はオレンジ系の色でした。
八掛を変えることで、もの凄く雰囲気変わりますよね!八掛取り替えは言ってみればマイナーチェンジですが、胴裏を新しくして八掛の色味を全然違うものにすれば、気分はフルモデルチェンジです!
出来上がったお着物をお客さまにご発送しました。
受け取られたお客さまからは「衣紋がめっちゃ沿う!」というお褒めの言葉を頂きました♡ そこはやはり、My寸法でお仕立てしましたから!そして更に…「解き洗い張りをしてお仕立て直しをすると、汚れがある所を別の場所に移動できるんですね!」という言葉も頂戴しました。 そうなんです!車のタイヤのローテーションみたいに、前後左右を変えられるケースもあるので、解いて洗うメリットはすっっっごく大きいです!!!
今回こちらのお客さまからは、とても大切な事を教えて頂きました。それは2つ。
まず、お着物に込められた思い出や気持ちについて。お母さまが遺されたお着物は他にもある中、どうしても気になったお着物を、わざわざ遠く離れた後藤和裁へとお仕立て変えのご依頼を下さいました。わたし達和裁士は日々多くの和服に触れています。その一枚一枚にお客さまのお気持ちや思い出が詰まっていて、ただの何でもないお着物なんてこの世に無い…分かっているつもりではありましたが、それを改めて教えて頂きました。こちらのお客さまはフラメンコギターのライブに、お着物をお召しになって行かれる予定でいらっしゃいます。素敵♡ お母さまの思い出の詰まったお着物でもあり、ご自身のお気持ちも乗っかっている、サイコーのお着物なのです( ◠‿◠ )♡♡
2つめは、人との繋がりについてです。
今回お客さまとはメールのやり取りのみで、お会いすることもお話することもありませんでしたが、電子メールの言葉に気持ちをキチンと乗せられれば、それは十分に心を伝えるツールになり得ると感じました。面と向かって会った人からの言葉で傷付くこともあれば、電子メールの言葉に救われることもある…真逆の出来事のようで、結局のところ「人とのつながり」はどのような方法であったとしても「人」次第なんだと改めて感じました。和裁と関係の無いお話になってしまいましたが、お客さまとお会いしたりお話する事無しでお仕立てをするケースは今後さらに増えると思います。その中でお客さまのお気持ちをどれだけ汲み取れるか…正解は無いけど誠実に向き合うしかないな〜、と思っています。
長くなりました。わたしにとっても思い出のお着物になりました!このような出会いを頂けてお客さまに心から感謝いたします。ありがとうございました(^人^)♡