大切なお着物が羽織になるまで 1
お母様の遺された単衣のお着物を、お仕立て直しをして着物として再生できるか…そんなご依頼をお受けしました。お預かりしたお着物はこちら。
黄色い糸印の所にかなりハッキリとした汚れがあり、よ〜く見ると他にも同じ様な汚れが幾つもありました。
まずはこれが落ちるのか?からのスタートとなり、いつものように「おおつき工芸」さんに相談すると、これはもう無理な汚れでした…
ただ汚れを落とすのであれば漂白してしまえば落ちるのですが、問題は地色まで落ちてしまう、という事です。そこで「染色補正」となる訳です。しかし…染めの着物であれば「染色補正」でなんとかなっても、織りの着物だと限界があります。織でもって柄を作っているので、織糸の色が抜けてしまってはもう後が無いのです。つまり、このお着物の汚れは和裁の力で隠すしか無くなりました。
そして第二の問題が… 身丈が全然足りない、という問題です。汚れが落ちれば胴継仕立てで身丈を長く仕立てればいいや。なんて思っていましたが、汚れた部分を隠して尚且つ身丈を長くする…一気にハードルが上がり、胴継仕立てのエキスパート宮本美穂さんにご相談しました。
ちょうど胴継仕立てに関する講習会を後藤和裁で開催する予定があったので、その講習会での素材として使用させて頂きました。
結論としては、「別布で足し布をすれば出来る」ということで、お客様とも連絡を取り合いながら、どうするのがこのお着物にとってベストなのかをご一緒に考えさせて頂きました。
そこで!今回のお仕立ては「着物→着物」ではなく「着物→羽織」となりました。本当に紆余曲折があり、ものすご〜〜〜〜くお時間を頂戴しましたが、最終的にとても良い選択になったと今は感じています。
さて、汚れはどうなったか…どんな仕立て方をしたのか…それはまた次回に( ◠‿◠ )
大切なお着物、だけどそのままでは着られない。そんなお悩みをお持ちの方、わたしも一緒に悩みますよ。場合によっては本当に一緒に悩むだけだった…という事もありますが、大概は解決策を導き出しています。お気軽にお問合せ下さい。