袷のお着物を単衣にお仕立て変え 生地のローテーション
ここ最近一番多いご依頼は「袷のお着物を単衣にお仕立て変え」です。ここ数年の夏の暑さと長さを考えたら、そうなりますよね。こちらのお着物も元は袷でした。
解き洗い張りをして新たにお仕立てしたので、元々短かった身丈をイッパイまで出してお客さまサイズに。勿論そのほかの寸法も、今のお客さまに相応しいサイズでお仕立てしました。
実はこのお着物、袖の布に結構大きな黄変した部分があって、仕立てる前に「おおつき工芸」さんにお直ししてもらいました。before after 比較できるように写真を撮っておけば良かったのですが、お直し前の写真を撮り忘れてしまい、黄変が跡形も無くキレーになった写真しか無いです…
かなりな黄変だったんですけど、何にも無かったみたいにキレーーになっていました。おおつき工芸さん、さすがです!!
解き洗い張りをしてお仕立て変えをするメリットは、まず第一に、洗うので一皮剥けて綺麗に清潔になります。そして寸法を整える事が出来る。更に、可能であれば生地の表裏を変えたり前後を変えたりする事で、今まで傷んだ部分を違う所に配置換え出来るのです。これは車のタイヤのローテーションをイメージすると分かりやすいです。着物で負荷が掛かりやすいのは、後身頃のお尻の部分と前身頃の膝の部分です。なので、前後を変えると(変えられるんです!)お尻と膝は高さがかなり違うので、お尻で傷んだ部分をまた次もお尻にするのではなく、前身頃にチェンジして摩耗する部分をずらす事が出来るのです。
それだけじゃないです。小紋は意外と適当に裁断されている事があるので、柄がとんでもなく妙なことがあります。絶対に良い柄を配置すべきポジションに、逆さまの柄がきていたり… 衿元の柄が左右で思いっ切り並んでいたり… ケースバイケースなので一言で「これはダメ」とは言い切れないのですが、たまに「ありえん!」という柄の配置がされていること、あります。それも、解き洗い張りをして前より良くする事が出来たりします。
今日のこの単衣のお客さまは一度に3枚の袷長着をお持ち込み下さって、全て単衣にお直しされました。その中には柄を直したものもあり、どうやって柄を良くしたのかについてご説明したところ「すごい… 頭の中どうなってるんですか???」と、和裁士冥利に尽きるお言葉を頂戴しました( ◠‿◠ )
わたしの頭の中ですか?そうですね〜、55%位が「今日帰って何食べて何飲もうかなー」で、40%位が仕事の事で、あと5%位が世界平和ですね。毎日雨露をしのぐ場所があり、好きなものを飲み食いできて、お仕事させてもらえて… こんな幸せなことないです(^人^)